相続放棄とは、被相続人の全ての遺産、全ての相続債務を放棄することを言います。
借金や滞納税金など負の遺産を引き受けたくない。相続トラブルに巻き込まれたくない、遺産分割の手続が煩わしく面倒な場合などのニーズに応える制度です。
被相続人が、生前において、サラ金や銀行などから借金をしたり、誰かの保証人になっている場合があります。また、被相続人が税金や家賃などを滞納している場合もあります。
相続をすると被相続人の責任は全て相続人が引き受けることになりますが、相続放棄をすると、被相続人の責任を引き受けることはありません。
相続が生じると、全ての相続人と話し合いをして遺産分割を進めなくてはなりません。
普段から仲の良い親族であっても、遺産分割の場面になると、感情が対立してしまい、トラブルが起こってしまうことも珍しくありません。また、話し合いをしなくてはいけない人物には、普段から疎遠だった人物やあまり仲が良くなかった人物が含まれる場合もありますが、そのような人物とうまく話し合うことが難しいこともあります。
遺産が少ない場合や自分の相続分が少ない場合は、遺産のトラブルに巻き込まれたくないと考える場合もあると思います。相続放棄をすると、相続トラブルに巻き込まれないで済むことになります。
遺産分割を進めることは簡単なことではありません。多くの戸籍謄本を取得したり、銀行で所定の手続を進めたり、不動産の名義書換をしなければならない場合があります。
相続放棄をすれば、遺産分割に関する複雑な手続を取る必要がなくなります。
相続放棄の最大のデメリットは、被相続人の全ての遺産を引き継ぐことができなくなることです。
被相続人にどれだけ多くの遺産あるいは大切な遺産があっても、相続放棄をしてしまうと引き継ぐことができなくなるのが通常です。そして、一度相続放棄をしてしまうと、原則として撤回もできません。遺産が少ないと思って相続放棄をしたものの、後からたくさんの遺産があることが判明した、やっぱり相続しよう、というわけにはいかないのです。
よって、相続放棄をする場合にはある程度慎重になる必要があるでしょう。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をしないといけません。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をしないといけません。一度相続放棄の申述をしてしまうと原則として相続放棄を撤回できません。
相続放棄をする前には、たくさんの遺産があるとは知らなかった、だから相続放棄はやめる、ということは基本的には許されないのです。ただし、他の相続人から欺されたり、強要された結果相続放棄の申述をした場合や未成年が法定代理人の同意を得ずに相続放棄をした場合には相続放棄の申述を撤回できる場合があります。
たとえ法定期間内であっても、相続財産の全部あるいは一部を処分した場合、相続財産の全部あるいは一部を隠匿した場合、悪意をもって虚偽の財産目録を作成した場合は、相続放棄が認められません。
相続放棄をすると、相続人としての地位が遡及的に消滅します。
その結果、相続放棄をした人物の子や孫が相続人となることはありません。
相続放棄をした場合でも、無条件に責任を免れることができるわけではありません。
相続放棄をした場合でも、その放棄によって相続人になった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければなりません。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をしないといけません。
もっとも、判例は、以下の例外的な事情があると認める場合には、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月が経過した後も、相続放棄をすることを認めています。
よって、法定期間が経過した後で借金が見つかった場合でも、簡単に相続放棄を諦める必要はありません。
【期間を過ぎても相続放棄ができる場合があります!弁護士にご相談を】
「被相続人に相続財産が全くないと信じたことについて相当の理由があること」を立証することができれば、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月が経過した後も相続放棄ができます。ただし、「相当性」の主張や立証は容易ではありません。具体的説得的に主張し証拠を提出する必要があります。
そのため、3ヶ月が経過した後において相続放棄をしたいとお考えの場合は、まず弁護士に相談されるのが良いと考えます。
相続放棄をすると、遺産も相続債務も引き継ぐことがなくなります。
一方で、相続分の譲渡をしても、遺産を引き継ぐことがなくなりますが、相続債務は引き継ぐことになってしまいます。
相続債務を引き継ぎたくないのであれば、相続放棄をしなければいけません。
生命保険は、遺産ではなく、受取人として指定されている人物の固有の財産にあたります。
それゆえ、相続放棄をしても、生命保険を受け取ることができます。
相続放棄をした場合でも、その放棄によって相続人になった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければなりません。この点は注意が必要です。
ここで問題となるのは、相続放棄をした人物以外に相続人となる人物がいないか、あるいは相続人全員が相続放棄をした場合です。このような場合、相続財産管理人が選任されるまでの間、元相続人は相続財産を管理し続けなければなりません。相続財産管理人は、利害関係人又は検察官の請求によって選任されます。
元相続人は利害関係人として相続財産管理人の選任を請求することができます。ただし、相続財産管理人の選任にあたっては、請求者が裁判所に数十万円程度の予納金を納めなければならない場合があり、相続財産管理人の選任を請求するのが困難な場合も認められます。
相続放棄をした場合でも、以下の事情がある場合には、相続財産の分与を受けることができる場合があります。
ただし、単に、被相続人と生活していたり、被相続人の生活の面倒をみてあげた、という事情だけでは、「4.」の要件を満たすものとは判断されません。「4.」の要件を満たすかどうかを判断するには判例を念頭においた検討が必要です。
【桜風法律事務所へご相談・ご依頼ください】
被相続人の多額の借金を免れることができるなど、相続放棄をすることで大きな利益を得ることができる場合があります。しかし、相続放棄に関連して様々なトラブルが起こる場合があります。
・・・など。このような場合、弁護士の助力を得ずに一人で解決することは困難であると思います。
桜風法律事務所は相続放棄の申述に関するご相談やご依頼を受けております。相続放棄をしようかお悩みの方はいつでも桜風法律事務所までご連絡ください。